2型糖尿病の寛解プログラムであるDiRECT研究は、現在英国糖尿病学会の一般向けサイトでも紹介されています。
research spotlight – putting type 2 diabetes into remission
前回までの記事では、この研究の元になった、あるいは関連する論文や記事を紹介しました。
この研究は、米国糖尿病学会の学会誌である Diabetes Care でも紹介されており、
2型糖尿病の可逆的性質は、ヒトの生体内研究において実証されている。
と言っています。
【参考記事:】
Type 2 Diabetes: The Pathologic Basis of Reversible β-Cell Dysfunction
重要なことに、長期的な過剰栄養供給によって生じるβ細胞の脱分化は可逆的である。
ヒトにおける体重減少は、膵臓内脂肪含量の増加が正常レベルへの減少に関連して、第1相インスリン分泌の回復を可能にする。
このレビューは、早期2型糖尿病が慢性陽性カロリーバランスに対する可逆的β細胞応答とみなされ得るという証拠を要約している。
更に記事中で、痩せ型糖尿病患者の記述もあります。
2000年から2008年の間の英国内で、新たに2型糖尿病と診断された人の11.3% はBMIが25未満だった。
直接的な観察データは、個人の皮下脂肪を蓄える能力を超えた場合にのみ異所性脂肪蓄積が起こるという閾値効果(個人脂肪閾値概念)が作用していることを示唆している。
この概念は、一部の民族グループ、特に南アジア人が比較的低いBMIで2型糖尿病を発症する傾向があることも説明できる可能性がある。
これはどういうことかと言いますと、皮下脂肪を貯蔵する能力(脂肪の閾値)というのは、当然のことながら個々人によって差があります。
それは脂肪細胞の数自体、あるいは脂肪細胞が分化する能力などの違いにより差が生じる訳です。
皮下脂肪の貯蔵が満タンになった後に更に供給される脂肪は行き場がないので、骨格筋での異所脂肪、内臓脂肪等という形で貯蔵され、やがてそれらがインスリン抵抗性、インスリン分泌不全の原因となって行きます。
痩せ型と肥満型の違いは、単に皮下脂肪を貯蔵する能力の差と言っている訳です。
更に、Journal of Clinical Endocrinology and Metabolismに掲載された順天堂大学の研究でも、痩せ型と肥満型は同様の体質と言っています。
【参考記事:】
食後高血糖となる耐糖能異常が痩せた若年女性に多いことが明らかに ~ 痩せていても肥満者と同様の体質 ~
痩せ型の若年女性の耐糖能異常の特徴を詳しく解析したところ、インスリン分泌が低下しているだけでなく、主に肥満者の特徴とされてきたインスリン抵抗性も中年肥満者と同程度生じていることが明らかになりました。
さらに、痩せているのにもかかわらず脂肪組織から遊離脂肪酸が溢れ出て、全身にばら撒かれている状態(脂肪組織インスリン抵抗性とリピッドスピルオーバー)をきたしているという予想外の結果が得られました。
さらに、体力レベルが低く、糖質からのエネルギーの摂取割合が低い一方で、脂質からの摂取割合が高いということがわかりました。
従来、インスリン抵抗性は肥満に伴って出現し、痩せ型の糖代謝異常はインスリン分泌障害が主体でインスリン抵抗性はあまり関係しないと考えられていましたが、本研究は、痩せた若年女性における耐糖能異常にも、肥満者と同様にインスリン抵抗性や脂肪組織障害が生じている「代謝的肥満」があることを世界で初めて示しました。
耐糖能異常の痩せ型の若年女性を調べたところ、脂肪組織が飽和して遊離脂肪酸が溢れ出し、インスリン抵抗性とインスリン分泌不足が生じるという、肥満型と同じことが起こっていた訳です。
身体活動の低下という点まで肥満型と同じです。