前回のお話では、糖尿病というのは、ひと言で言えば「糖質代謝異常」、もう少し解り易く言えば、インスリンの機能的低下により、細胞が糖を取り込めなくなる病気という説明をしました。
では、そのインスリンというのは、そもそも何なんでしょうか?
インスリンというのは、同化ホルモンであり、抗異化ホルモンです。
つまり、身体の中では同化を促進し、異化を防ぐホルモンです。
「同化」とか「異化」と言うと、難しい用語と思われるかもしれませんが、実はこれ、高校の生物の時間に習っています。
簡単に説明すれば、同化というのは、いくつかの簡単なものから複雑なものを合成することです。
筋肉や脂肪は、正に同化して維持されています。
反対に異化というのは、複雑なものを分解してエネルギーを産生することです。
呼吸したり、体温が一定に保たれているのは、脂肪や筋肉を分解してエネルギーを産生しているからです。
我々の身体が、とりあえず一定の体型を保っていられるのは、この同化と異化のバランスです。
同化が亢進し出せば、ブクブクと太りますし、異化が亢進すればガリガリに痩せて行きます。
インスリンの主な働きは、
- 骨格筋におけるグルコース、アミノ酸の取り込み促進
- タンパク質合成の促進
- 肝臓における糖新生の抑制、グリコーゲンの合成促進・分解抑制
- 脂肪組織における糖の取り込みと利用促進
- 脂肪の合成促進・分解抑制
と、いうものがあります。
皆さんご存じなのが、「身体に糖を取り込ませる」というものですが、実はインスリンというのは、身体の中では八面六臂の活躍をしています。
で、糖尿病というのは、まずこのインスリンが身体の中で効きにくくなるという「インスリン抵抗性」から始まり、インスリンが効きにくくなると、上記の5つと全く逆のことが身体の中で起こります。
つまり、
- 骨格筋におけるグルコース、アミノ酸の取り込み悪化
- タンパク質合成の悪化
- 肝臓における糖新生の抑制が効かない(亢進)、グリコーゲンの合成悪化・分解亢進
- 脂肪組織における糖の取り込みと利用が悪化
- 脂肪の合成悪化・分解亢進
高血糖になるというのは、インスリンが効かないことの一つの結果でしかなく、現実には上記の5つが一気に身体の中で起こっています。
結局のところ、最初の説明の通りインスリンというのは、同化ホルモンであり抗異化ホルモンであるので、これが効かなくなったり、分泌されなくなると、身体は同化できなくなり、異化の抑制が効かなくなるということで、簡単に言えば、身体は何もしなくても痩せて行きます。
「何もしなくても痩せて行くのなら良いのでは?」と思われるかもしれませんが、それは太っているのに栄養失調状態が続いて行くということですから、何も良いことはありません。